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単行本として出版し、小説すばる新人賞を受賞して話題をさらった本作。
この時点で文庫化されるのは確実だったので当時の私はこの作品に対してイメージを持ちつつも、すぐ読まなくても問題はないと考えていた。 そして今文庫化されて手にとって後悔した。 一度早いうちに読んでおいた方がよかった。 ある日、突然にとなり町との戦争が始まった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報誌に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた……。 第1章から第5章そして終章と続く各章で話は勿論続いていくわけだが、第5章で一度また終章で一度話が終わるように感じる。 言葉にしにくい不確かな感覚が頭に張り付いて離れない。 とても不思議な感じがする。 「戦争」という本来現実感を伴う出来事が行事として遂行されていく。 実際に主人公が武器を持って戦地に赴く設定があるわけでもなく、身近にいた人間の死を感じつつ物語が進むわけではない。 実際に目で戦争の状況を確認しながら生きているのではないのだ。 「戦争」を現実感のないものと設定し、実際に戦争を行うのは煩雑な手続きを踏む役所。 この現実感の所在も不確かなまま現実には戦争が行われる。 ものすごく捉えにくく、頭を使わせる、意外と難しい作品だ。 本作で戦争についての記述で印象深かったのは次の2点。 「おだたかな光の下に広がる大地を俯瞰するようなイメージ」 「もちろん見えないものを見ることはできません。しかし、感じることは出来ます。どうぞ、戦争の音を、光を、気配を、感じ取ってください」 正直現段階でこれを言葉で表現するのは難しい。 何年後か、必ずもう一度読もうと誓った一作である。 となり町戦争 | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報 となり町戦争 三崎 亜記 / / 集英社 ISBN : 408746105X スコア選択:
by melville_z
| 2006-12-25 23:00
| 人生小説
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