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独断偏見文庫館


貧乏な活字中毒者がこよなく愛する文庫本に対するあれこれ
by melville_z
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『送り火』(重松清 文春文庫)

懲りずに重松清。
3月連続で重松清が文庫化されて勝手に盛り上がっている私。
そしてボキャブラリーの少なさから同じ感想しか書けないのではないかと少々怖気ついている私。

そうは言ってもどうせ見に来る人少ないんだし自分のフィードバックと思えば…って。
以前某巨大SNSで重松清について書いた文章を引用。


もし今ここにシェンロンが現れて、

「お前の欲しい能力を一つ与えよう」

と言って目をキラーンとさせたら、さて何が欲しいだろう?


藤川球児のストレートを投げる能力か、バリー・ボンズのホームランを打つ能力か、マイケル・ジョーダンのバスケットの能力か、ビル・ゲイツの流行を見極める能力か、小林一三の経営の能力か、太田光のお笑いの能力か、エリック・クラプトンのギターを弾く能力か…

まあなんでもいい。
私が欲しいのは「重松清の表現力」
氏の小説を読むといつもそう思う。


以上引用終了。
本当にそう思うくらい重松氏の文章はすごい。
基本的に作家には得意なジャンルがあって同じようなモチーフをいつの間にか使っていたりするものだが、今回はちょと異ジャンルの作品もある。

最初の2編なんか特にそう思ったのだが、最近の「世にも奇妙な物語」向けの文章だな、と。
不思議な感覚が出てくる話。
重松清の文章はあまりがついてくる文章だという感覚があるが、今回はそのあまりがとても不思議な感覚をもたらしてくれた。

後半になり、『送り火』や『家路』なんかは重松氏らしい話だが、今回は最初の2編『フジミ荘奇譚』『ハードラック・ウーマン』が印象に残った。





送り火 | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報
送り火
重松 清 / / 文藝春秋
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# by melville_z | 2007-01-11 22:54 | 人生小説

『びっくり先進国ドイツ』(熊谷徹 新潮文庫)

別に私はドイツが好きなわけではないし、ドイツに行ったこともない。
ただなんとなく「読んでみようかな」と思って購入した。
別に期待したわけでもなく何となく読んでいたが、思いのほか面白かった。

『世界の日本人ジョーク集』という今流行っている本がある。
直前にそれを読んだことが理由かもしれないが、ドイツ人=頑固というイメージが強い。
本作は実際に日本人が現地で感じるドイツ人について書いてあって自分のイメージとの相違を感じながら読み進めた。

題名でドイツと言っている割にはミュンヘンとベルリンの話が殆ど。
ちょうどベルリンの壁崩壊前後世代の私にとって今のドイツしか知らない。
しかし、ベルリンの壁前後の話が多く、ドイツの歴史を感じられたのは確か。


さて、ドイツ人のイメージであるが、概ね思っていた通りだったようだ。
ただやはりステレオタイプなイメージになりすぎていた感は否めない。
ドライな感じのあったドイツ人でもやはりビールの祭りになると騒ぐんだな、とか。
さらに社会保障の話は作者自身否定的な書き方をしている分もあるが、日本と比べてみると五分五分かな、と。
労働者保護に関しては日本の制度は進んでいるものの、生活保障の面ではやはりヨーロッパ各国の方がいいかもしれない。
ただこれは日本人やドイツ人の考え方の違いも大きいので、日本人が書くと否定的になってしまうのかもしれない。

こういうのは実際には体験してみなければ分からない。
ゲーテが言った「母国語を知るには外国語を学ばなければならない」という言葉。
言いえて妙。
こういった本は本当にためになる。




びっくり先進国ドイツ | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報
びっくり先進国ドイツ
熊谷 徹 / / 新潮社
ISBN : 4101322325
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# by melville_z | 2007-01-07 22:10 | エッセイ

『月の扉』(石持浅海 光文社文庫)

沖縄・那覇空港で、乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされた。犯行グループ3人の要求は、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」を空港まで「連れてくること」。ところが、機内のトイレで乗客の一人が死体となって発見され、事態は一変。極限の閉鎖状況で、スリリングな犯人探しが始まる。
各種ランキングで上位を占めた超話題作が、ついに文庫化!

…とのことです。

おそらく「腑に落ちないミステリランキング」「途中で読むのをやめたくなってくるミステリランキング」「意味のないどんでん返しがついているミステリランキング」で上位を占めたものと思われる。

ミステリとしては犯人は候補からして一人しかありえないし、動機やなぜここで殺さなければならないのかといったところまで不明な点ばかり。
トリックや全体のハイジャックの仕方など特徴を出そうとする姿勢は見えてくるが、「奇をてらったものの、意外と反応はよくない」といった印象しか残らないのは残念。

ハイジャックに至る動機や登場人物のつながりなどは分からないでもないが、宗教的な奇妙さには個人的にはついていけない。


光文社文庫が今推している作品『セントメリーのリボン』『真相』に続いて読んだものの、これだけはイマイチ。
これは作者の個性なのか、自分の感性がついていけてないのか判断に悩むところ。

一言、消化不良だった。




月の扉 | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報
月の扉
石持 浅海 / / 光文社
ISBN : 4334740456
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# by melville_z | 2007-01-05 22:11 | ミステリー

『半落ち』(横山秀夫 講談社文庫)

今年後半になってどっしりした作品を求めるようになり、今まであまり読んでいなかった横山秀夫や桐野夏生などの本を読み始めた。
その時に『OUT』『模倣犯』『半落ち』は今年中に読もうと決めたものの、実際に読めたのは『半落ち』のみ。
ただでさえ文庫でしか読まないため世間の流行とはかなりかけ離れているのに、これでは余計離れていってしまう。

ただ、その読めない理由というのも存在する。
『OUT』『模倣犯』についてはボリュームの多さが一番の要因。
通勤の電車の中が主な読書時間である現状では大作を読了することへの対策がたてにくい。

そして『半落ち』…というか横山秀夫作品については「もったいない」という感情。
作品の長さでは考えられないほどの凝縮された作品ばかりである。
続けて何作も読んでいくと全てが複雑に混ざり合って訳が分からなくなってしまうという恐れがある。
一作一作時間をかけて、できれば合間に軽い作品やエッセイなど全く違うものを挟んで読みたいと思ってしまう。
一週間に横山作品は一作読めればいい状態で読んでいる。


前置きが長くなったが本作もその横山作品の粋が詰まっている。

妻殺しを犯した現職警察官に存在する空白の2日間。
事件の内容や動機に関して全てを素直に話す一方、この空白の2日間についてはどうしても語ろうとしない。
真相を追い刑事・検察官・新聞記者・裁判官までもが東奔西走する。

様々な視点から事件を追い、最後数ページで明かされる事件の真相。
早く読みたい気持ちと一字一句大切に読み進めたい気持ちが錯綜する。

決して長いとはいえない作品に詰めこまれた重厚さ。
改めて感服した。




半落ち | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報
半落ち
横山 秀夫 / / 講談社
ISBN : 4062751941
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# by melville_z | 2006-12-30 16:03 | サスペンス

『危ないお仕事!』(北尾トロ 新潮文庫)

毎年1年に1回は流行病のように「自分の中でクスリと笑える作家を見つけたい」と思う。
私の中でその系譜に連なるのは原田宗典、土屋賢二、宮沢章夫…。
今年は見つからないまま終わると思っていたところ、12月に入って見つけた。

それが北尾トロ。
『裁判長!ここは懲役4年でどうですか』でおっ!と思い、12月後半になって3冊立て続けに読破。
そのうちの1冊が本作『危ないお仕事!』

前作『怪しいお仕事!』に引き続き「求人雑誌には出ないような職業」に焦点を当てて紹介している。
本作は前作よりも趣味的というか「仕事」ではないものも含まれているような気がするものの、「知りたいけど知りたくない」的なものに焦点が当たっている。

著者が実際に取材をして書いているのであるが、著者の情熱(知りたい!と思う情熱)と共に様々な職業の人々の自分の職業に対する熱意などもひしひしと伝わってくる。

クスっと笑えて、チョビっと感心出来て、ホーと思ってしまう。
書き方も無駄なく軽く読めるので、一度読んでおいて損はない。
話しのネタになる。




危ないお仕事! | Excite エキサイト ブックス > 書籍情報
危ないお仕事!
北尾 トロ / / 新潮社
ISBN : 4101282528
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# by melville_z | 2006-12-29 23:40 | エッセイ